対処すべき課題・事業等のリスク

対処すべき課題

対処すべき課題として、以下の内容に取り組んでまいります。これらは各事業セグメントに共通するものとなりますが、特に、(2)及び(4)についてはR&Dアウトソーシング事業及び施工管理アウトソーシング事業、(5)についてはR&Dアウトソーシング事業、施工管理アウトソーシング事業及び国内その他事業に、主として関連するものになります。

(1)新型コロナウイルス感染症拡大と景気後退の長期化への対応

新型コロナウイルス感染症拡大の当社グループへの影響は、国内・海外の景気後退の深さと長さに依存します。当社グループの事業は、多様な産業にまたがる大手顧客を主体とし、技術領域も多岐にわたるという点で、通常の状況下では景気後退に対する耐久性・復元力は強いと認識しています。今後、新型コロナウイルス感染症の拡大が長引けば、稼働率低下等の可能性もありますが、当社には正規雇用する技術者の雇用を守り、就業機会を確保する社会的責任があります。一方で、こうして技術者リソースを手許に維持しておくことは、需要回復局面における再成長速度に寄与します。雇用維持を実現すべく、2021年6月期においては、在宅勤務体制の構築、徹底したKPI管理、リーンなオペレーション、財務余力の確保等に取り組み、コロナ禍での従業員の健康・安全確保を最優先とする万全の運営体制を継続いたしました。引き続き、ニューノーマルで需要が高まるデジタル技術領域を中心とした技術者育成への投資継続等、量から質への転換を図る一方で、財務健全性や先行的な業績管理等を踏まえながら、中長期的な成長に向けた投資を実行してまいります。

(2) 価格改善

  2016年6月期 2017年6月期 2018年6月期 2019年6月期 2020年6月期 2021年6月期
技術者一人当たり売上
(千円/月)
622 626 630 630 630 634

(注)㈱テクノプロ及び㈱テクノプロ・コンストラクションの売上高合算/Σ[月末稼働技術者数]により算定

当社グループの技術者一人当たり売上は、2018年6月期以降ほぼ横ばいで推移しています。これは、働き方改革関連法の影響による残業時間の削減や多くの新卒技術社員の入社等が要因です。一方で、中長期的な技術者需給動向や同業他社の水準を勘案した場合、当社グループの技術者一人当たり売上は、まだ改善の余地が大きいと判断しています。当社グループでは、技術者に対する教育研修の充実等を通じて付加価値を高めていくことに加えて、チーム配属の強化や戦略的シフトアップ(技術者を同一価格の同一案件に長期間固定させず、技術者のスキル向上に応じた適正価格水準の案件への配属を進めること)を進め、契約単価の上昇に継続して取り組んでいます。特に、今後の日本の技術開発を支え、需要が見込まれるデジタル領域の要素技術・ソリューションに対応した技術者を拡充し、ソリューション事業を推進することで、価格改善をより一層進めます。

(3) 高品質技術者の確保と育成

人材の確保は当社グループの成長の礎であり、高品質の技術者をいかに多く獲得し、あるいは在籍技術者のスキルをいかに高めていくかは、重要な経営課題の一つです。技術者採用市場は近年逼迫しており、従来主力のWeb媒体等に加えて、知人紹介や人材紹介会社等の多様な採用チャネルを活用し、高品質技術者の獲得を推進しています。また、中長期的に需要が見込まれるデジタル技術を主体としたターゲット要素技術領域(AI/データサイエンス、クラウド、サイバーセキュリティ、IOT、5G等)における技術者育成を、当社グループの教育研修基盤と戦略的アライアンスを活用しつつ進めることで、技術者の高付加価値化を図り、また技術者人事制度の充実等を通じて、技術者のリテンションを推進してまいります。

(4) IT技術の活用とプラットフォーム化

技術者派遣事業においては、採用母集団の形成、スクリーニングと採用、配属(マッチング)、リテンション、研修、育成・要員計画といったコアプロセスが存在し、IT技術の進展により、各プロセスにおける技術者情報を可視化し、一気通貫で活用する仕組みを推進しています。技術者情報の収集・蓄積・分析をデータサイエンスやAIも活用しつつ充実させることで、採用効率の向上、効果的な人材育成、適正な技術者配属(契約単価向上)等、コアプロセスを強化するための効果的な打ち手を導入いたします。また、中長期的には、これらの仕組みやデータ分析に得られる知見を活かした事業化(DX推進事業)を図ります。

(5) 業務プロセスの向上

当社グループの本社及び事業所の事務業務は、プロセス・ルール・帳票の標準化を進めることにより、まだ生産性を向上できる余地があります。営業・人事・会計といった当社基幹システムの抜本的な見直しを進め、ワンシステム化・IT共通基盤の強化を目指しています。情報システムへの投資による基幹システムのバージョンアップとともに、内部統制を具備した事務の標準化・効率化を推進し、事務機能の強化を図ることで、事業の拡大・進化に伴うオペレーティングレバレッジの向上を実現いたします。

(6) コア事業進化のための投資推進

ソリューション事業、技術者育成事業、及びDX推進事業を加速するうえでは、人材獲得、IT投資、M&A投資等の先行投資が必須となります。国内技術者派遣事業で培った資産・ケイパビリティをいかにこれらの進化系事業に活かし、進化系事業とコア事業とのシナジーを組織的に機能させるかが、今後の当社グループの中長期的な成長と価値創造の鍵になります。

事業等のリスク

当社グループでは、全社的リスク管理(Enterprise Risk Management、ERM)体制として、戦略・事業目的達成に影響を及ぼす可能性のある事象(プラス・マイナス双方を含む。)をリスクと認識し、組織全体として適切に管理する仕組み・プロセスを構築しています。当社グループの受容できるリスク量への考え方(リスク選好)を明確化したうえで、網羅的にリスクを識別し、影響度、予見可能性、発生確率等の観点からリスクの定性・定量的な評価を行い、回避、低減、移転、受容等の観点から対策を検討しています。

以下、各リスクカテゴリーに応じて重要性が高いと考えるリスクを記載いたしますが、予見可能性や発生確率が低い事項も含まれます。当社株式に関する投資判断は、これらの記載事項を十分検討したうえで行われる必要があると考えています。なお、文中における将来に関する事項は、本書提出日時点において入手可能な情報に基づき、当社グループが合理的であると判断したものです。また、当社グループに発生しうるリスク及び投資家の投資判断に重要な影響を及ぼす可能性のあるリスクは、これらに限られるものではありません。

-政治/経済-

(1)顧客の属する業界の景気動向

  内容 施策
マイナス面 顧客が属する業界の景気が悪化した場合に、就業時間の短縮化、契約条件の悪化、派遣契約期間中での中途解約等が発生
  • 技術者の付加価値を高める教育研修を強化し、技術者稼働率を安定的に維持
  • 多様な産業や顧客と取引することで、特定の業界・顧客の業況に大きく影響を受けないようリスクを分散(顧客上位10社の売上収益占有率は13.1%)

(2) 世界的な経済情勢の長期的趨勢

  内容 施策
マイナス面 世界的な保護主義への回帰、自由経済への制約の継続、世界規模での新たな感染症が定期的に蔓延することで、日系企業が研究開発投資に消極的な姿勢に転換し、技術系人材への需要が減少する事態の発生 グローバル化のさらなる推進により海外デリバリー拠点を拡充し、現地や欧米の顧客需要に応えるスキームとして日本に対するオフショア開発モデルを構築
プラス面 大手日系企業の国際競争力維持に向けた積極的な研究開発投資の継続 企業動向や政府施策を常時把握し、採用・ソリューション提案など先手が打てる体制を維持

-技術動向-

(3)技術革新への対応

  内容 施策
マイナス面 技術変化の方向性を正しく予測・認識できない場合や、技術者の有する技術スキル向上・転換が間に合わない場合の技術の陳腐化
  • 技術者が有する能力やスキルの高度化、新たな技術の習得等を支援するために様々な教育研修の機会を整備するとともに、教育研修の投資効率向上を推進
  • 将来の技術動向を分析し、注力すべき要素技術やソリューションを具体的に定め、当該領域で活躍する技術者の確保・育成、及びCenter of Excellence(COE)拠点の開発を推進
新たな技術により、研究開発やITシステム開発の工数が大幅に縮減した場合、技術系人材への需要が減少し余剰人員が発生
新たな技術に対応できる技術者の確保又は育成に向けた多額な費用の発生

-労働環境-

(4)技術者の確保

  内容 施策
マイナス面 技術者需給が逼迫するトレンドの継続により、技術系人材の確保が難航し、需要に見合う供給を十分に確保できない事態の発生
  • 採用チャネルを人材紹介会社の活用や知人紹介等に多角化するとともに、外国籍技術者の獲得も推進し、ソリューション事業拡大に向けた質を重視した採用を強化
  • 国内における技術者確保に向け、毎年従業員満足度調査を実施し、その結果をベースにした処遇改善施策等を通じて退職率を低減

 

なお、2021年6月期は、新型コロナウイルス感染症の拡大に起因する事業環境の不透明性に対応して採用を抑制したため、2020年6月期対比で、以下のとおり大幅な減少となりました。

  2016年6月期 2017年6月期 2018年6月期 2019年6月期 2020年6月期 2021年6月期
技術者採用数
(人)
2,541 2,684 4,151 4,512 4,398 1,405
総在籍技術者数
(人)
13,127 14,346 16,797 19,293 21,264 20,330

(注)M&Aによる獲得を含む技術者採用数、総在籍技術者数はともに国内に限り、総在籍技術者数は年度末時点

(5)国内の人口推移

  内容 施策
マイナス面 日本での総人口及び技術者数の減少による市場の縮小や新卒・中途採用の競争激化 グローバル人材の採用・育成や技術開発の効率化を推進
プラス面 日本での技術系人材需要の継続的な高止まり

(6)雇用慣行や働き方の変化

  内容 施策
マイナス面 HRテックやリモートワーク等の普及、フリーランスといったギグエコノミーの浸透によって、将来的に雇用の流動化や働き方の多様化が一層進展し、顧客が開発プロジェクトごとに必要な人材を直接確保することが一般化した場合に、人材のアウトソース需要が減少 従来の事業モデルに縛られることなく柔軟な対応を実施
プラス面 雇用慣行や働き方の変化を活かした人材の新たな供給源の確保 時代に合致した人事制度の見直し

(7)新事業領域拡大に向けた人材確保

  内容 施策
マイナス面 経営・事業人材の採用において、計画通りに採用が進展しない場合、コア事業の進化が鈍化 人材紹介会社やM&Aを通じて人材獲得を実施

-戦略/市場・競合-

(8)グローバル化の進展

  内容 施策
マイナス面 研究開発やITシステム開発がグローバル化する中、グローバルでのソリューション提供体制を構築できず、技術開発サービス需要の変化に対応できない事態の発生 成長戦略の一環として、M&Aを活用しながらグローバル化を推進
プラス面 日本企業に対するオフショアリング開発(特 バル化を推進 にデジタル領域)は、まだ浸透しておらず、M&Aによって海外の競争力あるケイパビリティをいち早く取り込むことによる先行者としての地位を確立

(9)顧客の需要動向の変化

  内容 施策
マイナス面 デジタル化やソフトウェア化の進展に伴い顧客が必要とする技術領域が広がるとともに、役務提供を越えて、成果物、課題の発見・解決が求められる傾向にある中、これらの顧客需要に対応できない事態の発生 単なる役務提供にとどまらず、ソリューション提供型に進化させるために、国内技術者派遣事業とのバランスを勘案しつつ、ケイパビリティ獲得のための投資や組織・オペレーションの革新を実施

-オペレーション-

(10)中期経営計画の達成

  内容 施策
マイナス面 外部環境変化の読み違いやそのスピードに追いつけない場合、また想定どおりに当社グループのケイパビリティを進化させられない場合に、中期経営計画『Evolution 2026』で掲げたコア事業の成長や進化を実現できない事態が発生
  • 事業戦略ごとの方針とタイムラインをまとめた5ヶ年のロードマップを作成するとともに、各方針に紐づく詳細なKPIを定めて、中期事業戦略の推進・進捗管理体制を強化
  • 戦略遂行に遅れが生じたり、修正が必要となったりした場合は、経営資源の投下や組織体制の強化を図り、戦略実現と計画数値の達成を促進

-M&A/提携・カントリーリスク・会計財務-

(11)企業買収(M&A)

  内容 施策
マイナス面 買収後に偶発債務等の発生が判明する事態、対象会社の当初想定した収益計画を達成できない事態、対象会社の事業運営に支障をきたす事態等の発生
  • M&Aに際しては、詳細なデューディリジェンスを実施
  • M&Aの基本原則として、中期事業戦略との整合性、買収プロセスの透明性、強固な財務規律、買収後の統合作業(PMI)やガバナンス方針を明確化
  • 特に財務規律として、資本コストを上回る投下資本利益率(ROIC)を重視

(12)減損会計の適用

  内容 施策
マイナス面 当社グループの収益性に認識可能な低下が見られる場合、のれんや無形資産に関する減損損失が発生 デューディリジェンスの過程から、事業部門やPMI担当者によるチームを組成し、投資後の計画を先行 的に策定するとともに、投資後は各種施策を早期に開始し、経営改善やグループ間連携の強化による想定シナジーを早期に実現
M&Aや出資した事業が当初想定した収益計画から大きく乖離した場合、少数株主に付与したプットオプションの公正価値が変動

法律規制・情報システム

(13)関連法制の動向

  内容 施策
マイナス面 労働者派遣法をはじめとした関連法令の規定に抵触し、労働者派遣事業の許可の取消、事業停止の処分等を受ける事態の発生 組織・規程・役職員教育を含めて、厳格な法令遵守体制を構築・運用
関係諸法令の見直しにより、業態に著しく不利な改訂が実施される事態の発生 ソリューション事業の拡大、技術者育成事業やDX推進事業の事業化により、法改正への耐性を強化
プラス面 規制の厳格化により中小派遣事業者の淘汰が発生した場合、当社グループへの需要が増加、市場シェアも拡大 技術系人材サービス業界のリーディングカンパニーとして、求職者にとって魅力的な業務・働き方・各種制度をさらに整備

(14)個人情報保護

  内容 施策
マイナス面 個人情報の外部流出が発生した場合に、当社グループへの社会的信用が失墜する事態が発生
  • 役職員への継続的な教育研修等を通じて、個人情報の適正な取扱いを浸透
  • CSR推進部長を個人情報保護管理者と定め、個人情報保護規程の整備・運用及び情報システム面も含めた個人情報に関するセキュリティ対策を推進

(15)情報セキュリティ

  内容 施策
マイナス面 当社グループの技術者によって、顧客の機密情報の外部流出が発生した場合に、損害賠償請求等が発生
  • 情報セキュリティに関する各種規程を整備・運用し、役職員への教育研修等を通じて、情報及び情報機器の適正な取扱いを浸透
  • ネットワークセキュリティ等の強化により情報システムのデータ損失や漏洩への対策を推進
当社グループの情報システムにおけるデータ損失や漏洩が発生した場合に業務運営に支障が発生

-労務管理-

(16)労務管理

  内容 施策
マイナス面 労働安全衛生や雇用関係等に関して、従業員との紛争の発生 採用時における人材品質確保、コンプライアンスを重視した労務管理を含む技術者管理の充実、教育研修体制の強化、従業員満足度向上等の取組みの実践

-ハザード・ESG・気候変動-

(17)感染症への対応

  内容 施策
マイナス面 従業員の在宅勤務の要請、技術者の地域間移動の制限、対面での営業活動や採用活動の制約といった供給面での影響の発生 在宅勤務を支える情報システムや人事制度等を構築・運用し、またリモートでの顧客開拓を推進する等、感染症拡大下で、従業員の健康・安全を最優先した事業運営体制を実践
顧客企業の業績悪化による需要の減少や研究開発プロジェクトの縮小・遅延といった需要面での影響の発生
プラス面 感染症リスクに対する認知の高まりによる、デジタル技術の社会・企業活動への浸透 デジタル技術に対応する技術者やソリューションの拡充により事業を拡大

(18)自然災害・事故

  内容 施策
マイナス面 気候変動に起因するものを含む地震や洪水等の自然災害や予期せぬ事故等による、当社グループあるいは顧客の設備の損壊
  • 自然災害や事故について、事業継続計画及び企業危機対策規程を策定
  • 情報システム障害に関しては、データリカバリーセンターを活用する等の対策を推進
プラス面 気候変動を意識したカーボンニュートラル等への取組みの進展 新たな技術革新に対応した技術者やソリューションの拡充により事業を拡大

-レピュテーション-

(19)コンプライアンス・業界イメージ

  内容 施策
マイナス面 役職員により、コンプライアンスを軽視した社会的倫理に反する行為等が行われた場合や社会的信用や企業イメージを棄損する行為が行われた場合に、社会や顧客が被る損害への賠償やレピュテーションの悪化等が発生
  • 当社代表取締役社長兼CEOを委員長とし、当社各部門長等で構成されるコンプライアンス委員会において、重視すべきコンプライアンスリスクの特定とその重点管理を実施
  • グループ横断のコンプライアンス専任部門の設置、トラブル発生時のエスカレーションルールの徹底、内部監査の実施と是正活動、内部通報制度の周知等を実施
類似の事業を営む他社が上記行為等を行った場合、業界全体に対するイメージが悪化
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